戦後70年企画 1995年9月に発行 「語り継ぐ未来へ」私と戦後50年 ピックアップアーカイブス

語り継ぐ未来へ 私と戦後50年 九州機関紙印刷所刊「語り継ぐ未来へ…私と戦後50年」は1995年の夏、戦後50年を迎えるにあたって平和をゆるぎないものにするためには、私達自身の「出発点」「原点」を見つめなおし確認することから始めなければならない、との思いから戦争と平和にまつわる体験と想いを寄せていただきまとめたものです。
九州機関紙印刷所の呼びかけにこたえて58人の方から作品が寄せられました。
今回は、8月15日の終戦記念日まで、その作品のなかからいくつか紹介していきます。


更新日:15年06月08日

新しい時代の夜明けの為に



上原文雄

72b30e31c8b62c6d56922f2be2e5a197_s 過去を語ることが出来ない者は、未来を展望する事はできない。政治が歴史を偽造して過去を未来に求めるなら政治の未来はない。社会の進歩とは、人類の文明とは、人間がより人間らしく生きていける政治を目指すことであるはずなのに。現在の政治体制への幻滅が広がっています。

一生懸命に働いても借金が増え、今は以前のようなまともな仕事もなく、生活を維持するのに家族全員が働き、子供たちの生活が自分たちより豊かになると信ずることができない。

人間の歴史において、寒さや、飢えや、病気の心配なしに真に生活を楽しむことができるようになったのは、今日をおいてほかにありません。戦後軍国主義が取り除かれた日本とドイツの奇跡的な復興は、軍備の負担から解放された際に経済の果たす成果がどれほど大きなものであるかを示しています。

他方アメリカ、ソ連の経済の停滞は軍備増強の結果です。政策遂行の手段として戦争を否定し、軍隊を保持しない、日本国憲法が今日の経済発展の原点であり、戦争を否定し軍隊を保持しない日本は、一国の安全があるとすれば全世界で最も安全な国です。日本を危機にさらすのは在日アメリカ軍基地です。日本を攻撃目標に変えてしまうからです。

軍隊とは国民の生き血を栄養として労働の成果を、生産的な活動から非生産的な冒険へと転移させるガン細胞であり、人類にとっての呪いであります。

主権在民と個人の自由というわれわれにとって、もっとも慕わしい権利を奪う巨大なうとましい力は、いまようやくその正体を明らかにしつつありますが、それを覆い隠していたものは、果たしてなんだったのでしょうか。

憲法のどこに、どの条文に、野心に満ちた悪しき政府の目的に応ずるのが国民の義務であるなどと書かれてあるでしょうか。

無制限な徴税権をもつ自由な政府というのは、かつて人間の心に浮かんだ思いの中で、もっとも滑稽ないとうべき矛盾であり、愚挙であるといわなければなりません。かつて詩聖と呼ばれた(ダンテ)はその詩の中で、地獄のなかの最も熱く焼けただれた場所は、

「道徳的な危機にあたって中立を保った人間のために用意されてある、」と言っています。もし、われわれが地獄の最も焼けただれた熱い所に行きたくないと思うなら、こと、道義的な危機状況においてはやはり、イエスかノーをはっきりさせる必要があります。

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