【連合通信】6月20号掲載 派遣法案の背景 専門業務廃止は業界の意向 審議会労使の意見も聞かず
今回の労働者派遣法「改正」案によって、専門26業務の有期雇用の派遣労働者が3年以内に大量失職しかねない問題について、当事者からは悲痛な訴えが相次いでいる。専門業務の区分をなくすことで、これまで働いてきた労働者も同一職場で最大3年間しか働けなくなるためだ。政府がこうした問題点を知りながら、「廃止」に踏み切った背景には、派遣業界の強い意向があった。
使用者も懸念表明
専門業務の廃止を打ち出したのは、日本人材派遣協会だった。2012年12月にまとめた「今後の労働者派遣制度についての基本的な考え方」で明確な廃止を提起。その後、厚生労働省内の有識者会議(今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会)の報告書にも引き継がれていった。
法案化に向けて検討を始めた労働政策審議会の関係部会では、労働側だけではなく、使用者側からも専門業務区分の廃止には慎重な意見が出ていた。「真に高度な専門性が必要な業務もあり、26業務全ての廃止は慎重に議論すべき」「派遣労働者の雇用に重大な影響を及ぼす可能性もあり、26業務の廃止は求めない」などの見解表明があったのだ。
それでも、事務局を務めた厚生労働省需給調整事業課の富田望課長は、専門26業務の廃止を含む叩き台文書を提示。審議会委員から出された異論を無視する形で法案化を進めていった。
有識者会議と労政審部会の両方で座長を務めたのが、鎌田耕一東洋大学法学部教授だ。同氏は6月2日、衆議院厚生労働委員会の参考人質疑の中で、野党議員から「(労政審は)反対や懸念を無視した強引なとりまとめをしたのではないか」と問われ、「部会長としては労使双方のご意見を伺うよう努力し、ご指摘のようなことはなかった」と答えた。明らかにうそである。実際は、労使の反対・慎重意見を無視し、専門26業務の廃止を強引に推し進めていた。