悲惨な歴史を受け継ぐ
三苫 哲也(55歳) 福岡市博多区 福岡医療団労働組合
悲惨な歴史を受け継ぐ
いま、世の中は世界大戦前夜のような様相を呈しています。ウクライナとロシアの戦闘に加えて、アメリカがイランを攻撃し、中東情勢がこの上なくひどい状況になってしまいました。テレビでは空爆の様子やがれきと化した街並みとか、泣き叫ぶ親や子の映像がたくさん流されています。放送コードが国によって違うでしょうから、各国でどのような映像が流されているのかわかりませんが、日本国内の映像では、悲惨な状況は確かに伝わりますが、どこか絵空事になっていないでしょうか。リアルに戦場の様子が、伝わってはいるのですが、果たしてどうなのでしょう。一人の人間が死んでいくとき、爆弾に被弾した人が足や腕がもげ落ちて、もしくは、顔の半分が吹き飛んで、その人の意識はあるのでしょうか。人間は簡単に死なないと、戦争に行った祖父の兄から聞いたことがあります。ここにやはり、私たちは想像力を働かさないといけないのではないかと思います。自分が、自分の愛する人が、子どもが、親が、爆弾の破片が顔に突き刺さり、地獄の苦しみの中、悶え死んでいく姿を。
その姿を思い起こせば、何がなんでも戦争をやめさせなければならないと、考えが及ぶのではないでしょうか。しかし、そうは言っても、なかなか戦争の悲惨さをイメージすることは難しいのかもしれません。ゲーム感覚でリアルな戦争ゲームも流布していて、逆にバーチャル空間に戦場がなってしまっているのかもしれません。
私は、だからこそ、平和学習、語り部の方のお話を若い世代でも口承していく、実相を現した反戦映画を見る、「はだしのゲン」を読む、こうしたことが本当に大切になってくるのではないかと思います。
日本が戦争に負けて80年という年月が経ち、先の戦争の悲惨な状況をなかなか伝えられない状況ではありますが、しかし、至るところで若い人たちが継承にむけて立ち上がっています。私も、福岡市の戦跡巡りを福岡の戦跡の著書である首藤たくもさんから案内していただき、その後、著書をよみ、また博多の歴史なども話を織り交ぜ、福岡大空襲の実態と博多の歴史として、ガイド活動をしています。
ただ、一方で危うさもあります。戦争映画は反戦の衣を装いながらも実際に見てみると特攻が美化されていたり、特に若い人に人気の役者の映画などにその傾向があるようですが、ここは注意しないといけないところだとも思います。私もお話をしながら、事実と私の感想、当時逃げ惑った母の実際の言葉と、それを聞いた時の私の気持ち、など、明確にしながらも、悲惨さを伝えるという作業の難しさも感じます。それでも、今の僕らの世代がリアルに悲惨さを継承し伝えていくことは本当に世界平和につながる大いなる活動だとも思います。ぜひ皆さんができるところからやっていきませんか。